12月15日

「こことよそ」を読んだ。

19歳のとき出会った、元暴走族で映画撮影所で働いていた尾崎さんのお別れ会の連絡が来たこと。

谷崎の「異端者の悲しみ」を60歳の保坂さんが読み、それを繰り返し読んでいた大学五年生、小説家を夢見ていた頃のこと。その頃歩いた正月の夜の鎌倉の道。

お父さんが交通事故で突然亡くなったこと。その時お父さんが自転車で走っていた鎌倉の同じ道。

 

保坂さんの「書きあぐねて〜」だったか。文章に書くと普通に書いても何となく暗さがプラスされるから暗いことは一切書かない、又暗くなる雰囲気を感じさせるようなことも書かないことにした、(プレーンソングを書いたときのルールだったか?)というところをよく覚えていて、わざわざそんなことを考える保坂さんが好きになった。

自分は明るいと保坂さんはよく書くしトークでもよく言っている。実際明るそう。それは暗くなるような出来事がなかったから明るくなったということでは当然なくて、80年代に社会人だったからという時代のことも書いてあるけれど、やっぱり、「わざわざ」そう考えたんだと思う。暗くなることは書かない。そんな保坂さんが好きになった。

この小説には「昨日の写真は撮れないが昨日は無くならない」という一文がある。

いつか、悲しくてどうしようもない出来事が起こったときこの言葉がきっと力をくれると思う。